古本屋の仕事

古本の商品の性質上、必要があって古本屋を覗く人より、何となく、何かおもしろいものでもないか、
と思って入って来る客の方が多いのがこの商売であろう。この、いわば目的の定まらない客を、ふらふらとあっちへ行きこっちへ来、あっちを見こっちを見している客の行方を、それとなく追っていなくてはならない仕事です。
たとえば薬屋なら、客は入って来るなりすぐに症状を言い、あるいは目的の商品名を言うに違い
ない。また本屋であっても新刊屋の場合ならば、その何分の一かは目的の雑誌名、あるいは本の題
名を言うに違いない。古本屋はしかし、入って来てこれを言う客は全くと言っていいほど少ないのである。
「お客さん、何の本をおさがしでしょうか。」
との言葉は、長いひやかし客にお引き取りをいただく時の言葉なのである。
古本屋は、とくに私共小規模の下町の古本屋は、主人がほとんど古本屋にいないことが多い。やっと食うだげしか売れない店番など、昼間からやっていては余分の金など残る筈もないのである。